Thanks
『…って新が言うんだよ!』
『へ~、そうなんだぁ!』
『新らしいだろ?』

いつの間にか緊張もほぐれ、時間を忘れて話をしていた。
新の話で雅が笑う。
本当に新が好きなんだね…

『2人の出会いって聞いてみたい…』
『簡単だよ、ただ同じクラスだっただけ…』

両親が海外へ旅立ったと同時、俺は新のいる街へと引っ越した。

『一人暮しするならセキュリティのちゃんとしてる所でって父さんがうるさくてさ。』
『だから高級マンションなんだぁ…』
『そうゆう事♪』

転校先の中学では快く受け入れてもらえなかった。

日本人でもなく。
フランス人でもない。
中途半端な存在…

『顔なんか日本人なのにな… 目の色が違うだけで。』

話をする時も、相手の視線はどっかにズレてた。

『そんな中で新だけなんだよね、俺と目を合わせたの!』

【俺、目ぇ悪いから気付かなかったけど雅くんの目ってハスキーみたいだね】

新だけが笑顔で言ってくれた…

『っくし…!』

話の途中、雛姫は小さくクシャミをして鼻をすすった。

『やっぱ寒い? 戻ろうか?』
『ううん… もっと聞きたい…』

ヘヘッと笑う雛姫。
雅は一度、立ち上がって傍に座り直す。

そして小さな体を腕の中に閉じ込めた…

『ッ雅?!』
『一応、防寒対策…』

防寒対策って言われても…ッ
今度は顔が熱すぎる!

『雛姫の顔、タコみたい。』
『だって…慣れてないもん…』
『新とは暇さえあれば抱き合ってんじゃん。』

…合ってるって、ただ抱き着かれてるだけですけど…

『それでね、カラコン着ける時も新だけが猛反対してたんだ。』
『そうなの…?』
『うん…』

その時も新らしい意味不明な事、言ってたよな…

【それじゃ雅が雅じゃなくなっちゃう】

俺は理解出来なかったけど新なりに「自分を隠すな」って言いたかったんだろうな…

『それが今までで1番大きな喧嘩!』
『どうやって仲直りしたの?』

雛姫が問い掛けると雅はニッと意地悪に笑った。

『新が痩せて過去を隠した時「お互い様」ってね♪』

なるほど…
根本的な解決はなかったんだ…
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