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近くの中学、遠くの中学…
たくさんの中学から来た生徒達を引き連れ、俺達は校内をまわった。

『つか何でハルが案内係なんかやるの? 3年の方が校内詳しいじゃん。』
『いや… 担任が「案内を無事にできたら停学を取り消してやる」って言うから。』

バツの悪そうに笑うハル。
そんな簡単な…

『俺、家って好きじゃないから停学になると困るんだよね~…』
『…ふーん…』

気楽って言ってたけど、やっぱり寂しいのかな…
ハルの親ってどんな人だろう…

うちとどっちがいいかな…?

『そういや、家に帰れって先生が言ってたよ?』
『え?』
『事情は知らないけどさ… 親も心配してんじゃないの?』

ハルは優しく笑う。
それが「恵まれた者の笑顔」に見えて無性に腹が立った。

『事情知らないなら勝手な事、言うなよ。』
『一久…?』
『ハルみたいな甘い家とは違うんだから。』

金髪やピンクの髪も許され…
煙草も許され…

そんな甘い親とはわけが違う。

『…だったら代わってみる?』

いつもより少し低い声が響く。
2度目の冷たい顔…

新入生達が騒ぎだす声さえも耳に入って来ない。
聞こえるのはハルの声だけ…

『好きであんな家に生まれたんとちゃうで? 何で俺が無理して標準語しゃべっとんのか解る?』
『ハ…ル…?』
『親と血ぃ繋がっとるのが嫌やからだわ。 顔も声も… 金があったら変えたいねんで…?』

どうして自分がハルに怒られるのか、よく理解出来なかった…

何を怒らせてしまったんだろう…

去っていくハルの後ろ姿をボーっと見るだけで、俺の体はピクリとも動かなかった…
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