Thanks
何度も何度も謝る一久に俺はひとしきり笑った後、「いーよ」と応えた。


『あの… 案内してくれないの?』

そんな俺達をずっと無言で見ていた少女がポツリと呟く。

『あ… そういや案内係の事、忘れてた…』

苦笑しながら一久を見る。

『大丈夫! 皆、動かないで待ってるから!』

それに満面の笑みで一久は応えてくれた。

『そういや、あんた新入生だったっけ…』
『そうだけど…』

俺は名簿を取り出して確認していく。

『…遠藤由希ねぇ… 入学式は遅刻しないようにね♪』

名前を確認した後で名簿を閉じ、由希に笑い掛ける。

『…はーい…』

由希は顔を少し赤くして小さな事で応えた。





そして新入生の待っている所へと戻った…

『皆さんお騒がせしました~♪ 次は保健室行きましょう!』

張り切って進むハルの少し後ろ…
俺は先ほど背中を押してくれた少女を捜して声を掛けた。

『さっきはありがとう… お陰で仲直り出来たよ…』
『いいえ♪ 仲直り出来て良かったです!』

少女は満面の笑みを見せ、少し恥ずかしそうに目を反らした。

『それに… 友達を連れて来てくれたんでお互い様です!』
『友達…?』
『由希… 私、由希しか同じ中学の子いなくて…』

少し寂しそうに言う少女。
そんな彼女の頭をポンッと叩いてみる。

『んじゃ入学したら俺達に声掛けてよ。 いつでも遊びに行くし!』

笑顔で言う一久に彼女は嬉しそうに何度も頷く。

『私の名前、マナッ…『一久ぁ! ちゃんと先頭歩けー!』

彼女の言葉を掻き消すようにハルが先頭から呼ぶ。

『ったくあいつは…』

一久は呆れたように溜め息をついて先頭に戻っていった…

【私の名前、真夏だよ】

彼女の言葉を最後まで聞かずに…
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