Thanks
『それでぇッ その2人、すっごい格好よかったの!』

真夏は興奮気味にハルと一久に訴える。

『体験入学の… 案内係…?』

自分達だったような…
ハルは恐る恐る一久を見る。

一久も同じようにハルを見た。

『特に最後に見た笑顔! 「入学したら俺達に声掛けてよ」って!』
『へ… へぇ…』

まさかアレが真夏だとは思っていなかったし、あの時はハルとの仲直りが先決で顔なんて見なかった。

今更、名乗り出るのもなぁ…

『由希が話した黒髪の人も格好よかったよね♪』
『ん… まぁね…』

由希は照れたように笑う。

『由希ちゃん黒髪が好きなの?』
『別に何でもいいけど… ピンクは派手すぎるよ!』
『え~…』

ハルは肩を落として屋上のフェンスに寄り掛かる。

『でも入学してから一度も見ないなぁ… 卒業しちゃったのかな…』

寂しそうに呟く真夏。
毎日、会っているが気付くわけがないだろう。

あの時の一久はピアスもしていないし、髪も染めていなかった。

ハルは体験入学の当日はスプレーで黒髪だったし…

『あーあ… もう一度会いたい… ね、由希!』
『うん… 会いたいね…』

うっとりとした目で空を見る2人に、ハルと一久は深く溜め息をついた。

『どーせ卒業してったんだろ、忘れろよ…』

昔の自分達だと解っていても他の男に会いたいと言われたら気分が悪い。

『一久先輩、ヤキモチだぁ!』
『んなわけねーだろ…』

『…ハルちゃん先輩も嫌な気分?』
『当たり前! 由希ちゃんは俺だけ見てればいいの。』

ハルと一久が高校1年生だった冬、体験入学の日…
4人は運命の出会いをした…

全ての物語はここから始まる…
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