Thanks
『名前は?』
『清水佳晴…』
『年齢、誕生日は?』
『16歳、9月20日…』
『よし、特に脳の後遺症はないな。』

何で俺、ここにいるんだろう…

確か歩道橋から落ちて…
それから…

『先生ッ 目が覚めたって本当?!』

突然、開いたドアから入ってきたのはスーツを着た若い男…

俺より少し年上かな…?

『佳晴くん、彼が君に血液を提供してくれた人。 南太一くんだよ。』

医者がそう説明するが、男の顔に見覚えはないし…
助けられる恩も義理もない。

たんなるボランティア精神ですかね?

『血ぃ分けてもらって悪いんやけど、俺には謝礼なんて払えへんから。』
『あ…ははは! そんなつもりじゃないから安心してよ! ただ同じ血液型だったってだけだし!』

太一はお腹を抱えて笑い、そう言う。

俺はAB型…
こいつAB型なら誰にでも提供するのか?

『2000人に1人って聞いてたからさ、Rh-のAB型!』
『…マイナスとかって…何なん? 俺はただのAB型やし…』
『まぁ、珍しいってだけ!』
『ふーん…』

意味解らんけどなー…
とりあえず相槌打っとこ。

『そういえば佳晴くん、最低でも1週間は入院してもらうよ? 詳しい検査もしたいし…』

医者はそう仕切り直すと、俺の額に巻かれた包帯にそっと触れる。

よく見れば体中が傷だらけ…

確かガラの悪い奴らに絡まれて…
取っ組み合いの喧嘩になったんだ。

それで足を滑らせて歩道橋の階段から…

『そういや俺、入院費なん払えんのやけど。 親なんいないし…』
『はい…?』
『だから今日、退院させてくんない?』

実際に親がいないわけじゃなかった。
ただ相当、仲が悪い。

あの親に頼るくらいなら入院なんてしたくなかった…

『でもね、佳晴くん…』
『んじゃ、先生が払ってくれるん? 無理やろ?』

困り果てた様子の医者と、無茶苦茶を言う俺。
そんな2人を見ながら太一は深く溜め息をついた。

『んじゃ俺が払いますわ。 彼の治療費…』
『は? あんた何言って…ッ』
『君くらいの顔と体なら治療費くらい軽く稼げるしね…』
『顔と…体ぁ?!』

不敵に笑う太一に俺はただタジタジする事くらいしか出来なかった…
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