Thanks
『退院おめでとー! 佳晴っ!』

1週間後、無理矢理に連れて来られたのは妖しい店が立ち並ぶ歓楽街。

しかも太一がポケットから出した鍵で開けたお店は…

『Beacon of…Hope? ってホストクラブやんけ!』
『大正解! 中へどうぞ♪』

太一はニッコリと笑うと扉を開け店内に誘導する。

中には誰もいなく、照明も辛うじて2m先が見える位…

『改めてよろしく。 Beacon of Hopeのオーナー、南太一です。』
『おッ……オーナー?!!!』
『と言っても、前オーナーだった親父から引き継いだだけだけどね!』

あっけらかんと答えると太一は棚からワインを取り出し色気ないマグカップに注ぐ。

『せめてガラスコップに入れてや… マズく見えるやん。』
『美味い物は美味い。 マズイ物はマズイ。 入れ物なんか関係ないよ…』

…そりゃ間違いないけどさ…
つかオーナーでホストって事は二十歳は超えてるんやろなぁ…

『それでね佳晴… 俺は佳晴にココで稼いで返してほしいと思ってる。』
『…は?』
『嫌ならいいけど… 16歳の君に返す宛はある?』
『…』

もしかしたら、とんでもない人物に借りを作ったかも知れない。

ココで稼ぐって事は、ホストとしてって事だ…
そんなの俺に…って…

『…俺、未成年やで?』

返す返さない以前にそういうのは法に触れるんじゃ…

『大丈夫、何処にも佳晴を知る人はいないし、ココは本名も年齢も答える義務はない。』

ホストは商品…
商品の詳細を知るのは管理者だけでいい。

客は…知る必要もない…

『ねぇ、どうする? それだけの素材があれば簡単に借金なんて消えると思うけど…?』

自信満々に言う太一に唾を飲む。
乾燥した都会の空気が悪いのか唾が喉を通る痛みを感じた。

親を捨て友人を捨て、たどり着いた街…

『えーよ、とりあえず借金返すまでなら…』

そこで俺は大切な人に出会った…
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