Thanks
(洋side)
「無理して笑ってる」

何だよそれ
いつ俺が作り笑いしたって?

【あんたの顔、見るだけで苛々する】

これは…誰が言った?

『まただ… 映像のない記憶…』

12歳より前の記憶。
音声だけが残ってる…

痛い。
苦しい。

寂しい。

あいつと話すと記憶が甦る。

『洋!』

突然、誰かに呼ばれて振り返るとそこにはルミがいた。

『どこ行くのぉ? 購買?』
『いや… ルミのとこに行こうと思ってた。』
『マジでぇ? 嬉しー!』

ルミはそう言って俺の腕にしがみつく。
俺はそんなルミに横から軽くキスをした。

『ここ廊下だよ?』
『いいじゃん。 ついでに最後までしちゃう?』

冗談のつもりがルミは笑顔で答えた。

『じゃあ裏庭いっちゃう?』

軽い女。
人の事言えないけど…

『悪い… 裏庭は知り合いが掃除当番なんだ。』
『知り合い? 友達って事?』

友達?
別に友達じゃないよな?

『顔見知り。 保健室なら今日、先生いないよ?』

俺はルミの手を引いて保健室へ向かった。


『ンッ…アッ』
『声…出さないで? 見つかるから…』
『あッ でもぉ…』

1番好きな瞬間だった。
繋がってる瞬間だけは傍にいてくれる。
誰よりも…

でも誰だってよかった。
彼氏がいる女でも、体目的の女でも…

『和之…?』
『うん。 少し前まで付き合ってたんだぁ…』
『…』

マジかよ…
じゃあアイツが別れた彼女って…

『つか、和之と俺が知り合いって知ってる?』
『もちろん♪ 裏庭で会った事聞いたし!』

へぇ、承知でね…

『悪いな。 和之と兄弟になるのはゴメンだわ。』

…もう遅いけど。

『ちょッ 洋!』
『…バイバイ?』

友達なんて裏切るもの。
裏切られるもの。

でも和之だけは傷つけたくなかった。
何でかな…?
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