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そして翌晩…

『ハルくん、風俗なんか行くのー?!』

客の1人がそう言った。

『行かんよ、何で?』
『ライター! それってすぐそこのヘルスでしょ?』
『…あー… そうなんやぁ…』

噂のヘルス…
彼女はあそこで働いているのだろうか…

『ハルくん、若いもんねー! 仕方ないかぁ!』
『つか行くって決めつけやなぁ… そこまで餓えてへんって…』

ホストともホステスとも違う商売…
それは自ら望んだ事なのか…

そうでなければ…

『助けたい…なんて偽善かな…』
『ん? 何か言った?』
『んーん、気にせんで。』





【あげる】

そう言ってライターを差し出した彼女…

その瞳は漆黒…
だけど俺には灰色に見えた。

俺と目を合わせているのに、何処か遠くを見ているような…
そんな風に思えた。






それから数日…

『え? 休みが欲しい?』
『そ、飲み会があってさ! 駄目?』

すっかり彼女の事を忘れてた俺は太一にお休みを貰いに事務所を尋ねた。

『飲み会って… 地元にでも行くの?』
『いんや、ここのお客さん達と。』

そう…
それは数日前の事。

酔った勢いもあり、プライベートで飲み会に参加する事になってしまったのだ。

『佳晴って変な奴… 何の儲けもないじゃん、それ…』

確かにHopeで飲めば一部が自分の金になる。

だけど…

『いーの! 友達として飲みに行きたいんだから!』

Hopeで話す時、あくまで俺は商品であり人じゃない。

そーゆうの、何かつまんないんだよね…
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