Thanks
Hopeで出会った沢山の仲間…
それは本当に大切な人達だった。

どうしても捨てたくない大切な友達…



『ハル、今日は来てくれてありがとー!』

飲み会の後、駅まで送ってくれたお客さん達が口々に御礼を言う。

何か照れ臭いな…

『えーって! 俺も楽しかったし、また誘ってな!』

きっとイメージが下がった人もいただろう。
俺はスーツを脱いだらただの人だった。

カラオケも歌うし安い酒も飲む。
ギャグだって言うし無邪気に笑う。

ホストらしくない…
正直、自分でもそう思う。



まだ酔いの覚めない体で電車に乗り、店の最寄り駅で降りる。

宙に浮いたような違和感が拭えないまま、とりあえず歩き続ける。

そんな俺を颯爽(サッソウ)と追い抜いていったのは…

『…幻覚…?』

確かに、あのライターをくれた彼女だった。

相変わらず薄いワンピース。
寒くねーのかな…

それにヒールの高い靴。
歩き辛そうだよな…

きっと彼女が向かうのは、あのヘルス。
俺が向かうのはHope。

追い掛けるつもりはなくとも列んで歩いてしまう。




しばらく歩いていると、1人の男が彼女の前に立ちはだかった。

大きくて男臭そうな奴…
ありゃ、ナンパやな。


予想通りに彼女を口説く男…
彼女は黙って聞いていた。

さて…
ここはヒーローが……

そう思い右足を出した瞬間…
男は勿論、俺まで耳を疑うような言葉を聞いた。

『いくら払ってくれるの?』

「自分の値段」を問い掛ける彼女の横顔…
善も悪もない、クリアな目…

『いくらでも払うよ、いくら欲しいの?』

男は興奮気味に彼女に近づく。
それでも彼女は顔色1つ変えず、真っ直ぐに男を見ていた。

不思議な生き物…

もっと不思議なのは、俺の行動。

『走れ…ッ!!』

俺は無意識に彼女の腕を掴み、全速力で走っていた…
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