Thanks
高級ホテルの一室…
窓の外には歓楽街が夜景として見える。

背後の扉が静かに開くのを感じた俺は、振り返り笑顔を見せた。

『こんばんは。』

まさか呼び出されるなんて思ってもみなかっただろう…
詩織は目を見開いたまま固まっていた。

『とりあえず扉閉めようや。 怪しまれないように…』

俺はそんな詩織の手からドアノブを取るとパタンと扉を閉める。

『…ご指名…ありがとうございます…』

ようやく我に返ったのか、詩織は小さな笑顔でそう言った。

『どういたしまして… まず何か食べよ? 俺、さっき仕事終わってさ…』

幸いな事にHopeの閉店時間は詩織のお店より早い。
その気になれば毎日だって呼び出せる。

『駄目… 次の指名が入るかも知れないから…』

詩織は上着を脱いでベッドに座る。

ちゃっちゃとヤッて帰りたいってわけね…
でも悪いけど、俺は詩織としたいわけじゃない。

『なら…店が閉まるまで、俺が詩織を買うわ。』
『え…?』
『いくらになる?』

ただ詩織と普通に話してみたかった。

何を考え…
何を思うのか…
それを知りたかった。







『オムライスかナポリタン…』
『うーん… 悩むなー…』

詩織はお店に連絡した後、ルームサービスのメニューと睨めっこ。

相当な時間を悩んだ。

『両方頼んだらえぇんちゃう? そしたら半分こ出来るし…』
『うん、そうする…』

前にも思ったけど、どうやら俺と詩織の好みはよく似ているらしい。

便利といえば便利やけどな…

『なぁ、明日の予定ってもう決まっとるん?』
『決まってないけど…』
『じゃあ明日も俺が買うから… ここで待ってて?』

俺の言葉に詩織は少し戸惑った後で、小さく頷いた。






ねぇ、詩織…
もしかしたら俺は最初から君に堕ちてたのかな…?

あの日見た君のクリアな瞳に…
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