Thanks
『ふッ…ハァ…』

何度か唇を重ねるうちに湧き出た感情…

同情、愛情、独占欲…

「気になる」はもう言い訳になっていた。
俺はただ彼女を傍に置きたいだけ…



『ハルくんお金大丈夫…?』
『うん?』
『私の値段… お店に払ってるんでしょ…?』

詩織はそう言って不安げに見上げる。

何処の世界に客の金銭を気にする風俗嬢がいるのだろう。
そんな事気にせずに、来てくれれば満足なのに…

『キスだけでそんな高いお金貰う義理… 私にはないもの…』

義理とか、もうどうでもいいんだよ。

『じゃあ今度の休み… 俺と会ってよ。 プライベートとして…』

俺は詩織を他の客に渡したくない…








日曜日の午後1時…
「恋愛禁止」の規則に則(ノット)って俺達は少し遠出をした。

情けない事に、俺は免許が取れる歳じゃない。

『たまには電車の旅ってのもえぇやろっ!』

それがバレるのが嫌で、こんなごまかしをした。

『うん。 私、電車好きだよ?』

それなのに詩織は笑顔でそう答えてくれる。

一体、彼女はいくつなのだろう…
あの店で働けるくらいだ。
2つは年上なんだろう…

太一とそんなに変わらないくらいかな…?


『なぁに? 私の顔に何かついてる?』
『い、いや… 別に…』

大人になりたい…
俺が大人だったら高級車で颯爽と詩織を迎えに行けたのに…

『ねぇハルくん、海が見えるよ!』
『うん… 綺麗やね…』

子供な自分に心底、嫌気がさす…
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