Thanks
『今週の順位を発表する……ハル!』

皆の前で名前を呼ばれるのも、もう何度目になるだろう。

Hopeでは各週、売上を発表してくれる。

『残念だったな、ハルは2番だ。』

でもまだ太一を抜いた事はない。







『あー、悔しい!』

マンションに戻ると早速、詩織に悔しさをぶつける。

あのデートから数日…
詩織は毎日、俺の自宅へ出張してくれている。

だからといって何か進展があるわけじゃないけどね…
強いて言うなら「ホテル代がかからない」という事だけ。

『No.2でも凄いと思うよ? まだまだハルくん若いんだし。』

詩織は何気なくそう呟く。

『そりゃ…若いけどな…』

詩織より4つも…

『私も男だったら良かったなぁ…』

と突然、漏れた詩織の言葉。
何気ない一言が妙に気になった。

『何で男がいいの?』
『だって…男ならいくらでも働く所があるじゃない…』
『働く所…?』
『ハルくんみたいなホストもいいし… 道路工事だっていい…』

寂しげな横顔…
もしかしたら詩織は、あの店から逃げたいのかも知れない…

『綺麗な仕事がしたいの…』

よく考えれば誰だって嫌に決まってる。
あんな仕事…

初めて会った人に抱かれ、精一杯に楽しませる。

俺だったら御免だ。


『詩織… あんな店、辞めて俺の所に来ない…?』
『え…?』
『好きなように暮らせばいいから…』

No.2でも人よりは収入がある。
決して人一人を養えない収入じゃない。

詩織一人くらいなら…

『…馬鹿にしないで。』
『詩織…?』
『ハルくんの相手だけしてれば美味しい物が食べれるの?』

どれくらいぶりに見ただろう。
詩織の真っ直ぐで透明な目…

『そんなのお客さんが減っただけにすぎないじゃない。』

でもあの時と状況が違う。
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