Thanks
詩織に少し似た女の子を追い出して数分…
詩織が部屋の扉を開けた。

『お待たせして申し訳ありません…』

詩織はポツリと呟くと扉を閉める。

着ている意味もない薄手のキャミ…
お尻まで被さった裾からは白い足が伸びる。

『お疲れ様。 何処にいたん? どんな客やった?』
『2つ隣の部屋… 普通の会社員みたいな人…だよ?』

ねぇ、詩織…
俺は限界だよ?

この同じ建物の中で、他の男に抱かれる詩織を思う。
それだけで怒りが沸き上がる。

『ただ俺の傍で笑うだけでいい。 美味い物も欲しい物も全部あげる…』

代償は詩織の笑顔でいい。
体なんかどうだっていい。

『それの何が不満だ? こんな風俗よりずっとマシやろ?!』

お願いだよ…

『こんな店、辞めちまえ…』

辞められないなら、俺がさらってもいい。
もう詩織のそんな格好、見たくない…

『…辞めたら…どう生活すればいいの?』
『だから俺の所で…ッ』
『ハルくんの家に住むの? そしたらいつかハルくんの恋人が来る… 奥さんだって来る。』

詩織はそう言うと真っ直ぐに俺を見た。

昔から視力がいい方ではない。
だからかな…
詩織が泣いてるように見えた。

それを自分の都合良いようにとるのは、あまりに勝手だろうか…

『ねぇ詩織… 恋人も奥さんも来ないよ…?』

来るのは詩織だけでいい。

『同情なんかと違う… 詩織が好きだから、こんな所にいてほしくない。』

恋人も奥さんも詩織がなればいい。

『俺の所においで…?』







浅はかだったと笑ってくれていい。
あの時、頭の中は詩織でいっぱいだった。

Hopeでの規則も…
太一への恩も…

俺の頭の中にこれっぽっちも存在していなかった…
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