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『四大…かぁ…』

写真や絵で楽しげに紹介されたキャンパスライフ。
パンフレットの中には誰もが見とれる美女もいた。

『なぁに? 何か不満?』

ぷくーと頬を膨らます由希に対し、ハルは苦笑してみせた。

誰かもわからぬパンフレットの美女。
そんなものに嫉妬してるなんて事、言えるわけもなく「別に」と答えを出す。

桜が蕾(ツボミ)をつける頃、ハルは由希をおいて別の学校へと移る。
それは学年が違えば当たり前の事で、避けようのない事実。

だけど入学式で出会ってから今まで片時も離れた事のなかった2人。
ハルがいない残りの1年を過ごす由希は憂鬱で仕方がなかった。

『一久… どうしたかなぁ。』

ハルはポツリと呟くと後ろのベッドへ体を預けた。

『明日…だっけ? 受かってるかなぁ…』

3月6日に合格発表を終えたハルに遅れ、一久は明日21日に発表を迎える。

人事ながら、気になって仕方がなかった。
なんといっても、希望が医学部なのだから…

『やっべー… 見て、俺の手。』

カタカタと情けなく震える指先。

『やだぁ、ハルちゃん先輩ってば自分の時より緊張してる!』

由希はその手を握ると、クスクスと笑い出した。




父さん母さんが出会い俺が生まれ、そしてまた大切な人に出会った。

一度バラバラになった絆は今、少しずつ繋がろうとしていた……










『でっけー…』
『1人で住むには寂しい場所でしょ?』

詩織は手慣れたように玄関の鍵を開け、扉を開く。
長い廊下が果てなく続くような…そんな暗闇が目の前にあった。

『マジで俺、引っ越してきていいの?』
『駄目って言ったら困るでしょう? マンション引き払っちゃったんだもの。』

パチンとスイッチを押す音と同時、部屋に明かりが灯(トモ)る。
しかしその明かりも薄暗く心許ないものだった。

ここで寝て、ここで過ごす。
ここを出る時はあの店に行く時。

どれだけ寂しかっただろう。
どれだけ辛かっただろう。

『ハルくん、上がって…?』

そんな彼女に二度と寂しい思いをさせないと。
…そう、心に誓った。
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