Thanks

次の日の昼過ぎ。
少し早めに起きて、画用紙を買いに行った。

よく目立つ、黄色の画用紙。


『何を描いてるの?』

マジックを片手に睨めっこ。




身体を大事に!
枕営業を禁ずる




『店に貼るポスター』
『へぇ、可愛いわね』

まだ文字しか無いポスターに、そう言う詩織。

つか、それって俺の幼い文字に対してですか?

なんてイヤミを言いたくなる。

『このへん寂しいな。 詩織、何か描く?』

文字を真ん中に書いたから、どうも周りが寂しい。
かといって、絵は苦手やしな。

『ふふっ、ハルくんの似顔絵でも描こうかしら』
『いいね、それ。 格好よく描いてや』

冗談かと思ったから、冗談で返したのに、詩織はさっと似顔絵を書きはじめた。

俺に似てるのに、俺より格好いい似顔絵。

『詩織には、こんなふうに見えとるん?』
『格好いいでしょ?』

自惚れだってわかってるけど、詩織の目にこう映ってると思ったら嬉しくなった。

『あと、こういう人もいたわよね』
『あ、それ太一だ』
『こういう人も』

次々に描かれていく、Hopeの人間達。
どれもそっくりで、ほーっと感心してしまった。

『ハルくんと出会ってから、よくお店を見てたの』

と、少し嬉しそうな顔をして詩織が言った。

『ハルくんが元気に笑ってるの、いつも見てたのよ』







そう言って笑った19年前の詩織。

あれを告白と受け取るのは、あまりに不粋だろうか。

でもきっと、詩織の精一杯の気持ちだったんだろう。

俺は、詩織に出会ってから、また再会する今日まで。
詩織から「好き」という単語を聞いた事がない。




でも、ハルに俺を重ねて抱かれる事を望んだ君を知って、これを告白だと受け取った。

詩織がハルと過ちを犯したとしても、
どれだけ汚れたとしても、

俺は、詩織を愛してる……
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