Thanks

『今月はこの方針でいくから、皆もよろしく頼みます』

太一の右腕として店を管理していくのも随分慣れてきた。

この店を任された事は、どれだけの負担になっていたんだろう。

俺と2人で話し合って方針を決めるようになってから、太一の笑顔が増えた。

まさに「肩の荷が下りる」といった感じだな。

『ハル、今度のイベントの事だけど』

帰り際、太一は一枚の紙を見せて言った。

『こんな感じでどうかな』

企画書だ。

まだ先のクリスマスイベントの事だった。
ド派手にやるつもりなのか、結構な金額になるらしい。

『なぁ、今年は少し違う感じにしたらどうや?』
『違う感じ?』
『俺達からのクリスマスプレゼントって事で、指名料タダとか』

いい案だと思うんやけど。
まぁ、実際に実現できるかは太一次第やけど……

『……うん。 いいね、それ』
『そやろ! タダなら、気軽にいつもと違うの指名できて、客も喜ぶと思うねん』

その日は、きっと忙しくなる。
金額を気にせず、誰でも指名できて、きっと楽しくなる。

『流石だな』
『なっ! 流石やろ?』
『うん、流石に貧乏性だけあるな』

……それ褒めてねーだろ。
確かに無料とか割引って言葉好きだけどさ……

『きっと、今後の売り上げに繋がるよ。 ありがとう』
『……どういたしまして』

なんか微妙だけど、太一が笑うから「まぁ、いっか」で済んでしまう。

まぁ、惚れた弱みに近い……かな。
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