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クリスマスを間近に控えたある晩。
『じゃーん! マグロと胡麻を使った健康パスタ!』
たまの休みを利用して、少し手のこんだ料理を振る舞った。
『半生マグロのDHAと胡麻のセサミン、ビタミンも豊富なんやでー』
某テレビショッピング並の説明をしながら、フォークと共にテーブルに並べた。
『美味しそう。 ハルくん何でも作っちゃうのね』
詩織は、嬉しそうにそう言って笑顔を見せた。
そんな姿に、こちらも嬉しくなる。
だって、これは詩織のための料理なんだ。
日に日に痩せて弱る詩織のために作った料理。
詩織が喜ばなきゃ、こんなのはただの生ゴミと同じだ。
『はい、スープもあるよ』
こちらは即席だが、温かいコーンスープ。
『嬉しい。 食べていい?』
珍しく食欲ありそうだ。
本当に作ったかいがあった。
『いただきます』
手を合わせ、フォークを使い、パスタを口に運ぶ。
それを10回ほど繰り返した頃だった。
詩織が口元を手で押さえながら、席を立ったのは。
『詩織!?』
突然の事に驚いたが、まず流し台に向かい苦しそうに嗚咽を漏らす詩織の背中を、下から上へと摩(サス)った。
『大丈夫か?』
落ち着いた頃に声を掛けるが、詩織はフルフルと首を振るだけだった。
『とりあえず、横になれるよう用意してくるな』
詩織を椅子へ座らせ、その場を離れようとした。
『……行かないで』
そんな俺を引き止める詩織。
真っ青になったその顔を直視出来ない。
いつになったら血色(ケッショク)のいい顔が見れるのか……
原因も解決策も見当たらない事で、どうもプラス思考に考えられない。
もしかしたら、このまま詩織は……
そんな事ばかり考えてしまうよ。
『安心せぇ。 俺も一緒に寝るから』
不安を胸の中に押し込め、精一杯の笑顔を見せる。
詩織まで不安にならないように……
そんな俺に、詩織が言った。
『私…… 生理が来ないの』