Thanks

8月10日。
星の綺麗な夜だった。

『へい、らっしゃい、らっしゃい!』

『やめろって、その声掛け』

いつものように、俺と太一はちちくり合って(?)いた。

昼間の暑さから逃げるように、夜になると人はココへやってくる。

このHopeへ……

時計の針が10時を超えた頃だろうか。

休憩に入った俺は、携帯に詩織からの着信がある事に気付いたんだ。

それに出なかったからだろう。
短いメッセージが入っていた。

「まだ予定日前だけど、破水してしまいました」

焦った様子もなく、「とりあえず言っときます」感溢れるメッセージ。

だけど、もし詩織とハル(仮名)に何かあったらと思うと、いてもたってもいられなくて……

俺は何の断りもなく、店を飛び出してしまってた。




『くそ……ッ』

中々止まらないタクシーに苛立ちながら、手を上げつづける。

しかし、それでも止まらないから、仕方なく車道に立ち塞がってタクシーを止めた。

『馬っ鹿野郎!!』

タクシーの運転手は窓から顔を出し、怒鳴りつける。

それをチャンスと思い、助手席に強引に乗り込んだ。

『か、回送って書いてあっただろう!?』

それは百も承知だ。

『しかも助手席乗んなよ、怖ぇから!』

それも解ってるんだ。

『頼む…… 連城総合病院に向かってくれ』

でも、こっちもなりふり構ってられないんだ。
< 88 / 94 >

この作品をシェア

pagetop