ラッキー☆ルーレット
プロローグ
 「商店街の福引き券?」

「さっき八百屋で買い物したらおまけにもらったの。今日までらしいからあんたにあげるわ。どうせ暇なんでしょ、引いてきて頂戴」

「やだよ、めんどくさい。母さん自分で引いてくればいいだろ」

「そ~ねぇ、未来(みらい)が夕飯の仕度してくれるなら」

「……はいはい。ったくしゃねーなぁ」

俺は母から譲り受けた『町内の福引き券』。
これはどうやら『補助券』ではなく一枚で一回引ける『本券』らしい。

日曜日の午後。
連休最終日、家でグダグダしているところを母親に見つかった俺は、無理矢理に外へ出されたと言っても過言ではないだろう。

俺の名前は蔵重未来(くらしげみらい)、至って普通の高校一年生。
未来って名前が少々、女ぽくて気にいらねぇんだが。
親が付けてしまったものに今更文句も付けられまい。

「もう夏になるんだなぁ~」

桜の季節も過ぎそろそろ夏が来るかのような陽気。
道ゆく人々も半袖を着ている。
もちろん……俺も。
あのまま家に閉じこもったままだったら、この季節感を味わえなかったのかって思うと、今までの苛立ちも小さいことに思えてくる。

「福引きの会場は……おっ!あれか」
商店街の一角にある所謂『街のでんき屋』の前にそれは用意されていた。
三人くらいの人が並んで順番を待っているのが見える。

どうでもいいかもしれないが、今や大型の家電量販店が主流になっている世の中、街のでんき屋はいつ見ても暇そうだ。

「券預かります」

「あ……はい」
俺はズボンのポケットから折り目の付いた福引き券を取り出した。

「一回ですね、どうぞ」

緊張する瞬間だぜ。
まだ一等のハワイ旅行は出てないのか……。

よ~し!!
抽選器のハンドルに手をかけ静かに回す。

因みに俺の過去のくじ引きハズレ歴を教えてやろうか。
十連敗、すなわちポケットティッシュ……十個だ。
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