ラッキー☆ルーレット
「やべ~古典の宿題あるのすっかり忘れてたぜ」

昼休みが終わり五時間目が始まるまであと五分。これから先が一番眠くなる時間と言ってもいいだろう。

「はい、よかったらどうぞ。今から写せば間に合うでしょ」

「あ、ありがと」

そう言ってノートを貸してくれたのは雪乃だった。

とうとう俺にも運が回ってきたか?!そう考えてしまうのは単純だと分かりつつも、微かな希望に期待を寄せてしまう。

「蔵重君は……夢月さんと仲がいいのね」

「ま、まぁ……知り合いと言うか親同士が仲が良くて、それで」

ひと先ずはそういうことにしておこう。

そんなことを言いながらも、鉛筆を握った右手だけは早く動かしていた。
あと三分。
なんとしても終わらせてやる!

「そうなんだ……」

「ミクがどうかしたのか?」

「ううん、別に」

「……そっか」

あと一分。
よし!

「今日、一緒に帰ってもいい?」
「終わった~っ!!」

えっ?

俺の耳が確かなら、

『一緒に帰る』

って聞こえたんだけど。


「今、なんて……?」

「一緒に帰ろう」


キーンコーン……、
カーンコーン。


始業のベルがこんなに心に響いたのは始めてだった。
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