ラッキー☆ルーレット
雨は夕方には止み、帰る頃には晴れていた。
陽の光は木々の合間からうっすらと差し込む。
葉からは雨水が滴り、歩く者の頭や顔の上に落ちる。

「冷てぇ」

そんな声も時には聞こえたり。

家までの道のりがこんなに長く感じたのは初めてかもしれない。
ミクも今日は何も話そうとしない。
いつもだったら……、

「まだ怒ってる?」

「当たり前だ」
勉強のこと、クラスメイト、先生のこと……これでもかってくらいに話すくせに。

「ミクはね……まだ半人前なんだって。一人前の『月人(つきびと)』になるための修行なの。ラッキー指数ゼロの未来を『幸福』にしてあげることが」
この沈黙に耐えきれなくなったのか、彼女は事の始まりをゆっくりと語り始めた。

「俺が『幸せ』になった時……か。そしたらミクは……」

「帰るの、私の住んでる世界、『月』の近くにある小さな星『ラッキードリーム』に」

「ラッキードリーム?」

「そう」

「……?」


「そん時はさ、未来の最高の『笑顔』見せてよ」


「ミク……」

いつかは別れる日が来るなんて考えても見なかった。
今が楽しくて……、
充実してるから。

微笑んでくれた彼女の笑顔が俺には十分過ぎるほどの『代償』だった。
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