ラッキー☆ルーレット
一日は過ぎるのが早い。今更、分かりきっていることだけど。

「今日……か」
只今、午前十時一分二十三秒。

「うん」

あいつが来る日。
多分、今頃は……。


「はろ~!ミク!!」

げっ!!もう来やがったか!!俺の予想では夕方か夜になると思っていたのに。

「レオ!!」

あの時の青年の姿ではなくミクと同じ『猫』の姿だった。
毛の色は薄いグレー。

「早くミクに会いたくってさぁ~起きてすぐに家飛び出してきちゃったよ」

彼の目線が俺に向けられる。完全にライバル心剥き出しって感じなんだよなぁ~。

「なんだ?お前、ミクとはどういう関係だ?」

「……どうと言われても」
思った通りの質問。
俺はミクに助け船を求めるために目配せした。どうやら感じ取ってくれたみたいだ。

「私はあんたみたいに遊びでここに来ているわけじゃないの!一人前の月人になるために修業に来てるんだから!邪魔しないで!」

「まだそんなこと言ってるんだ。ミクは女の子なんだから、月人の称号なんかに拘ってないで早く俺と結婚して幸せな家庭を……ってな」

「ばっ、ばっかじゃないの!女だから男だからなんて関係ないわ!!私は一人前の月人になるの!そう決めたの!!それに……これは大事な『約束』だから」


「……ヒロはもういないんだぜ」


ヒロ?誰だ?

「ごめん、未来。ちょっと外の空気吸ってくるね」

「おいっ!ミク!!」

「夕方には戻るから。レオのことお願い」

そう言い残すと彼女は窓から出て行ってしまった。
もちろん『猫』の姿まま。
< 27 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop