ラッキー☆ルーレット
「そんなにすごいものなのか?」
俺は窓から彼女の後ろ姿を見送っていた。

「……何がだよ?」

「月人の称号ってやつは」
ミクの言ってた……『約束』が頭から離れなかった。

「まぁ、お前には分からないだろうけど。俺たちの星では成人(十八歳)になると、月人の称号が全てなんだ。言わば階級社会」

「へぇ~なるほどねぇ」

「称号が一つ上がるだけで生活の待遇の全てが変わるからなぁ。(給料はもちろん住む家、食べる物、着る物に至るまで)『ウィード』から始まり、『クローバー』『ダンテ』『オリーブ』『サン』『チェリー』『ラベンダー』『リリー』『ローズ』……全部で九つの称号があるんだ」

九つもか……。

「ミクはどの辺りなんだ?」

「『チェリー』だよ。この『チェリー』から『ラベンダー』に上がるには相当な覚悟と難しい試験や課題があってな。ここで諦めるヤツがほとんどなんだ。だからこそ『ラベンダー』になって初めて一人前となる」 

「で、お前は『ローズ』ってか」

「まぁ、な」
レオは少しはにかみながら言った。

「さっきから気になっているんだけど、一人前と半人前と何が違うんだ?」

「そうだな、簡単に言えば自分の可能性が広がるってとこかな。半人前じゃ、一人前の月人のアシスタント止まりなんだ。階級が上になればなるほど政府要人の護衛や、国家機密組織の出入りなどその活動の幅は大きく変わる。またルーレットの操れる技も増えるんだ。今はラッキー指数を計ったり、ターゲットの個人情報を調べたり、タイムスリップすることしかできないが、それ以外に瞬間移動や時間を止めたり、空を飛べたりとか、変身もできるようになる」

「なるほど……ミクは『約束』って言ってたけど、ヒロってやつは何者なんだ?」
そいつのことが一番気になっていたと言っても過言ではない。

「ヒロは俺と同じ歳……ミクの二つ年上で俺たち三人は幼馴染みなんだ。彼女の口癖は決まって『一人前になる』だったな。あいつは俺よりも早くたった二年(平均は十五年)で『ローズ』まで登りつめたんだよ」

「すげーな、お前ら三人とも。そのヒロってやつも今じゃ相当偉くなってるんだろ?」


「死んだよ……一年前に」

死んだ……?
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