W・ブラッティ
3
手紙には機械で書かれていた。
『新沼慎次様へ
この度はわが社のプロジェクトへの参加ありがとうございます。サンプルをお送りしましたので、お使いになってみてください』
とだけ書かれてあった。
知らない会社に、知らないプロジェクト。慎次は段々怖くなった。手紙とダーツの入っていた箱をごみ箱へ投げ捨てた。しかしダーツの矢だけはどうしてか捨てることが出来ない。
おそらく本能がこの美しさに惚(ほ)れているのだろう。この矢を無下(むげ)に扱うことを本能が許さない。
もう一度矢を見る。光の屈折(くっせつ)で違う黒が見える。自分とは違う。様々な色が慎次を魅了(みりょう)する。
そこから急に自分に話しかける声が聞こえる。男の声。この家には今、慎次以外に男はいないはず。慎次は周りを見渡す。やはり誰もいない。
――よお。俺の声が聞こえるのか?
「えっ?誰?どこにいるの?」
――どこって、俺はお前の目の前にいる。そこからずっと話しかけている
目の前。あるのは本棚(ほんだな)だけ。慎次は本棚に近づく。
――どうしてそうなる?お前が持っているダーツの矢だよ
慎次は驚いた顔で右手に持ったダーツの矢を見る。先程(さきほど)までとは違った黒を魅せる。
――そうだ。お前には力がある。俺の声を聞こえるほどの力をお前は持っている
「力?僕にはそんなもの持ってないよ」
――お前には隠された力を持っている。俺には分かる。だから俺に協力させて欲しい。
「協力って?何するの?」
――今は言えない。だがお前を殺す真似はしない。少しだけお前の体に入れさせてもらうだけだ
慎次は何が何だか分からない。そうしているうちに自分の意識が体から追い出されていく。気がつけば自分の体を見下ろしている。目の前には自分の体。そこには自分の知らない顔をした慎次の姿があった。慎次は自分のことをしっかり見てこう告げた。
――これからは俺も生活させてもらう。少しだけこの身体(からだ)を貸してもらうぜ
そこから慎次の意識が途絶(とだ)えた。
『新沼慎次様へ
この度はわが社のプロジェクトへの参加ありがとうございます。サンプルをお送りしましたので、お使いになってみてください』
とだけ書かれてあった。
知らない会社に、知らないプロジェクト。慎次は段々怖くなった。手紙とダーツの入っていた箱をごみ箱へ投げ捨てた。しかしダーツの矢だけはどうしてか捨てることが出来ない。
おそらく本能がこの美しさに惚(ほ)れているのだろう。この矢を無下(むげ)に扱うことを本能が許さない。
もう一度矢を見る。光の屈折(くっせつ)で違う黒が見える。自分とは違う。様々な色が慎次を魅了(みりょう)する。
そこから急に自分に話しかける声が聞こえる。男の声。この家には今、慎次以外に男はいないはず。慎次は周りを見渡す。やはり誰もいない。
――よお。俺の声が聞こえるのか?
「えっ?誰?どこにいるの?」
――どこって、俺はお前の目の前にいる。そこからずっと話しかけている
目の前。あるのは本棚(ほんだな)だけ。慎次は本棚に近づく。
――どうしてそうなる?お前が持っているダーツの矢だよ
慎次は驚いた顔で右手に持ったダーツの矢を見る。先程(さきほど)までとは違った黒を魅せる。
――そうだ。お前には力がある。俺の声を聞こえるほどの力をお前は持っている
「力?僕にはそんなもの持ってないよ」
――お前には隠された力を持っている。俺には分かる。だから俺に協力させて欲しい。
「協力って?何するの?」
――今は言えない。だがお前を殺す真似はしない。少しだけお前の体に入れさせてもらうだけだ
慎次は何が何だか分からない。そうしているうちに自分の意識が体から追い出されていく。気がつけば自分の体を見下ろしている。目の前には自分の体。そこには自分の知らない顔をした慎次の姿があった。慎次は自分のことをしっかり見てこう告げた。
――これからは俺も生活させてもらう。少しだけこの身体(からだ)を貸してもらうぜ
そこから慎次の意識が途絶(とだ)えた。