W・ブラッティ
 気がついたら夕闇が空を支配していた。
帰り道の電車の中。体を慎次に明け渡し悠介は少し気配を消した。よほどショックだったみたいだ。


 しかし、もし鉄斎のテロが起きてしまえば日本はどれほどの被害を被るか分からない。分かるのは三日後は休日で、そして都市部ではより大きな被害が出るということだ。


 今日児童虐待や親の離婚の報道が後を絶たない。それに子供たちのストレスが肥大化(ひだいか)している時代だ。どれくらいの子供が聖のものを受け取ったか分からない。そしてターゲットが子供だけとも限らない。


 現に慎次は受け取っている。もし慎次と同じくらいの少年少女が受け取っていたら?この年頃は感受性が豊かである半面、傷つきやすくストレスに対する耐性も弱い。だから彼らは誰かに話して分かってもらいたい。傷ついている自分に気付いて欲しい。そう言った心理を逆手に取ったはずだ。


 メールでそのようなことを謳(うた)い、知らないメール相手とも友達として付き合うこの時代。さぞかし魅力的なメールに見えるだろう。
住所や電話番号をもしくは本名一つで何でも分かる時代。小包が届いたらもうこっちのもの。聖の支配下は一気に増大する。
彼らは休日になればほとんどは都市部に向かうだろう。デートに行くにしても友達とショッピングにしても。


 爆弾の威力は?所詮(しょせん)血を媒介(ばいかい)とする爆弾なら人一人吹き飛ばすくらいが関の山ではないか?否。それなら鉄斎はここまで大掛かりなことをしない。
 

 人間一人当たりの血液は約五千ミリリットル。それが全て爆弾に変わるとすれば、それは一気に兵器に変わる。一人でも十二分に人を殺傷することが出来る。あわよくば日本そのものを爆破できるかもしれない。


 アメリカで起きたテロなどの比にならないほどの惨劇に変わる。死傷者はほぼ日本国民全体に上る一億人以上が容易に予想できる。
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