探偵 早乙女瞳
大きく振りかぶったマスターはそのグラスをオレ目掛けて思いっきり


ブン


アレ?おいおいマスター…勢いがつき過ぎてテーブルの上を滑らせるどころかまっすぐオレの…



ゴッシャッーーン!!



こぷあっ!!



グラスはテーブルを滑るどころか直に頭に直撃、鮮血と共に砕け散り、オレはそのままイスから崩れ落ちた。

ぐ…おお…あ、頭に直撃したぞマスター!?いくら相手が美人だからってはりきり過ぎ…



朦朧とした意識の中、オレの頭を割ったマスターの方に目をやると「やったな」という顔でオレに向って親指を立てていた。

なんだ?なんのつもりだ?その親指は…へし折られたいのか?

しかし、よくよく見てみるとその親指はオレにではなく隣りの美人、泣きボクロに送られているものだった。

泣きボクロは今の様子が面白かったのか、上品にクスクス笑っている。

なるほど…マスターは泣きボクロを元気づける為にこんなマネを…

いや、しかし…この女、目の前で人が頭から大流血しているというのに…普通じゃないんじゃないのか?

まさか、この女…相当のハードボイルド!!

こ、これは負けてられんな…流血などしている場合ではない。

オレは必死に平静を装いながら席につき、彼女に依頼内容を聞く。

「さあ、用件を聞こうか?」
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