パパとママだけのヒミツのお話
長いキスの後。
近くで見る想の顔は妙に色っぽくて
かっこよくて。
まっすぐ見る事なんてできない。
でも
この違和感が何なのか知りたくて
左の手を見てみると。
「想、これって」
「浮気はしてねぇよ。今日メイが見たのはきっと秘書だ」
「でもでも!」
「ジュエリーショップから出てきたのはこれを買いに行ってたから」
「でもでも」
「でもでも」
「もううざい」
そう言って再びあたしにキスを落とす旦那様。
そっかぁ~、想はこれを買うためにって
でも一つだけ疑問が残る。
「ねぇ想、じゃあどうしてあんな笑顔見せたの?」
「それは・・」
あの時。
「ありがとうございました」
店を出て歩きながら
もしこの指輪をアイツにはめたらどういう顔すんのか・・
そんな事を考えた。
絶対に泣きながら喜ぶな
その顔を思い出すとなんだかおかしくて
変にくすぐったくて
フッと笑みがこぼれる。
「あれ~?かなり嬉しそうな顔してますね~?」
少しからかったような言い方をするのは
一緒についてきた秘書の吉田。
「うるせぇよ」
コツンと吉田の頭を叩いて歩みを速める。
「いた、奥さん喜んでくれるといいですね~」
そう言いながら俺の腕を組んできた。
「そこはメイの場所だ」
すぐに振り払うと
「奥さんきっと喜びますよ」
ふふっと笑って俺の先を歩きだした。