小さな街のドアベルマン

「…ベル、あなたはどうしてそこまで、私に付き合ってくれるの?」


『…なぜでしょうね。』


ベルは、そのまま『あなたが好きだからです』と言えたらどんなに楽になるんだろうと思いましたが、最後まで口にだすことはありませんでした。
それからすぐ、お嬢様は立ち上がりました。


「今日はありがとう」と言いながらホテルへ向かったので、ベルはドアノブを静かに掴むと、勢いよく開けました。


『おやすみなさいませ、ティンク様。』


「おやすみなさい。」


お嬢様を見送ったあと、きれいに晴れた夜空を一人見上げ、家路を歩きました。


翌日も、その次の日もベルはいつもと同じ笑顔をお嬢様に向けていました。


いついなくなるかも分からない人を一人想いながら、きっといつかティンク様が自分を必要としてくれる日がくる。
そう願ながら、明日もドアの前に立ち続けるのです。




   ―END―
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