狼×天然SS【文庫化記念】
「着替え終わった?」
「…え?う、うん」
試着室の向こう側から舜の声がしてやっと我に返ったあたしは、ゆっくりと試着室の扉を開けた。
扉を開けると、目の前に舜がいて少しびっくりしてしまった。
……そっか。
舜に見せなきゃいけないんだ。
扉を完全に開けたあたしは、舜にワンピースを着たあたしを見てもらうことに恥ずかしくなって、
舜の顔を見ることができず俯いて、あたしの視界には舜の靴だけがあった。
「……ど、どう?」
やっと出せた声は小さくて、舜に聞こえたかは分かんない。
だけど、一応聞こえていたみたいで……。
「やっぱりな」
そう言われた。
……やっぱりな?
どういうことなのか気になったあたしは顔を上げて舜の顔を見た。
舜はいつもみたいな意地悪な笑顔じゃなくて、たまに見せる優しい笑顔でいた。
.