【BL】背徳の堕天使
ものの10分もたたないうちに、キョロキョロと道路を見回しながら、佐久浪が戻ってきた。
俺は笑い出しそうになるのをかろうじて抑え、佐久浪に近付いた。
「探し物はコレ?」
指でつまんで、ふるふるっと目の前で振ってやる。
佐久浪は一瞬、俺の顔を凝視し、それからすぐに財布に目をやった。
「拾ってくれてありがとう」
表情も変えず、事務的な口調の佐久浪に、俺は精一杯の作り笑顔を向けた。
佐久浪が出した手のひらに、財布をポテッとのせる。
「どういたしまして」
佐久浪はそんな俺に気にも止めず、二つ折りの財布を開いた。
──中身、確かめんのかな……
目の前でやるなよ、と思うと、佐久浪は札やカードには目もくれず、一枚の名刺を取り出した。