【BL】背徳の堕天使


『甘味処 津慈莉』

看板には確かにそう書いてあった。



入り口で立ち止まった俺を振り返り、佐久浪は不思議そうな顔をする。



「嫌いか?」



困惑した表情の佐久浪に、俺は思わず首を振った。



「いや……嫌いじゃないけど」



取り立てて好きでもない。

そう言おうとした時。



佐久浪の言葉に、俺は唖然とした。






「すまない、女の子はみんな好きだと思ったんだ」



女の子……


そこで初めて、佐久浪は俺を女の子と勘違いしていたんだと知った。



「……えっと。俺、男なんだけど」



その言葉に、佐久浪の表情が一変した。



「え、あ、す、すまないっ」



そう言った佐久浪は、顔を真っ赤にアタフタしていて。



そういう顔も出来るんだな、と当たり前のことを俺は思っていた。


< 15 / 98 >

この作品をシェア

pagetop