【BL】背徳の堕天使
『甘味処 津慈莉』
看板には確かにそう書いてあった。
入り口で立ち止まった俺を振り返り、佐久浪は不思議そうな顔をする。
「嫌いか?」
困惑した表情の佐久浪に、俺は思わず首を振った。
「いや……嫌いじゃないけど」
取り立てて好きでもない。
そう言おうとした時。
佐久浪の言葉に、俺は唖然とした。
「すまない、女の子はみんな好きだと思ったんだ」
女の子……
そこで初めて、佐久浪は俺を女の子と勘違いしていたんだと知った。
「……えっと。俺、男なんだけど」
その言葉に、佐久浪の表情が一変した。
「え、あ、す、すまないっ」
そう言った佐久浪は、顔を真っ赤にアタフタしていて。
そういう顔も出来るんだな、と当たり前のことを俺は思っていた。