【BL】背徳の堕天使
それは、一度財布から出した金を、再び戻すのが嫌だからなんだろう。
俺が受け取るまで、そこに置いておきそうな勢いだ。
まぁいい。
俺は金から視線を動かし、何気なく部屋を見渡した。
「あ、部屋?
えっと……そうだな、どうしよう」
そう言って考え込む賢杜に、俺は訝しげな瞳を向けたに違いない。
賢杜は俺の視線に気付き、「や、……君の…っ……部屋をどこにしようかと思って」と言った。
言葉の間が途切れたのはきっと、俺をなんと呼べばいいか、いや、俺を本当に瑠唯と呼んでいいのか迷ったのだろう。
俺は賢杜に、精一杯の優しい作り笑いをした。
「瑠唯でいいよ。
それとももう俺を追い出したい?」