【BL】背徳の堕天使
「ねぇ」
耳元に唇がつくかつかないかというギリギリの距離。
息が耳に触れるのも計算ずく。
俺は笑いを滲ませながら、賢杜にそっと囁いた。
「時間」
「へっ!?」
全く予想だにしない言葉だったらしい。
一瞬気の抜けたような間抜けな声を出し、面食らった顔で固まった。
その顔があまりにも可笑しくて、俺は賢杜を指差して笑った。
賢杜はしばらく呆気にとられていたが、やっと俺の言った『時間』の言葉の意味がわかったらしく、
弾けるように時計を見た。
どうやら出勤時刻になるところだったらしい。
慌ていくつか俺に注意を取り付けると、急いで会社へと出掛けていった。