【BL】背徳の堕天使
2
昨日貰った名刺を取り出して、銀行の名前を確認する。
わりかし近い場所にあるそこへ、俺は賢杜の困惑した顔を想像しながら、ゆっくりと向かった。
銀行は混み合っていた。
賢杜を探してカウンターの向こう側をキョロキョロと見ていると、にこやかな女性が俺の近くに立ち止まった。
ロビーウーマンとでも呼ぶべき彼女は、銀行員らしい制服に身を包み、明らかに怪しい俺を警戒する様子もなく「本日はどのような……」と来店目的を尋ねる。
ここで「賢杜に逢いに」と言ったらどんな反応をするかなと思ったが、俺の口から滑り落ちたのは
「通帳を作りたいんですけど」
という平凡な言葉だった。
それを受けた彼女は、「有難うございます」と軽く頭を下げる。
その時、彼女の頭ごしに、ある人物を見つけた。