【BL】背徳の堕天使
第四章
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甘い蜜のような生活というものではなかったが、それから俺たちの間に流れる空気が変わったような気がした。
穏やかな時間が過ぎ去っていたけれど、それは薄氷だと心のどこかで気付いていたような気がする。
それでも、いやだからこそ、俺たちは触れることで互いの存在を確かめたかったのだと思う。
同じ部屋にいるという、それだけでは足りなくて。
今日も衣擦れの音が聞こえるくらいに近い距離に座り、俺たちはテレビを見ていた。
ワイドショーのようなつまらない番組だったけれどなんとなくBGM代わりにつけていて、いつの間にか二人で見入ってしまっていた。
20代半ばくらいのにこやかなレポーターが、『セレブ』という言葉を連発している。
どうやらよくあるセレブな女性たちの特集らしい。
チャンネルを変えようとした賢杜に異論はなかった。