【BL】背徳の堕天使
テーブルの上に無造作に置かれたリモコンのボタンに、賢杜の指が触れることはなかった。
画面を凝視する賢杜につられ、俺もテレビに視線を向ける。
そこに映っていたのは、賢杜のアルバムでよく見た顔──瑠唯、だった。
テレビの中の彼女は、アルバムで見た写真よりも幾分か洗練されたように見受けられた。
よく手入れのされた髪がそう見せるのか、きっちりと施されたメイクの成せる技なのか。
幸せそうにころころと笑う様子が画面一杯に広がると、賢杜が小さく溜め息をついた。
そんな賢杜を正面切って見る勇気はなくて、俺はそっと息を殺してそれを目の端に捉えることが精一杯だった。
何も見れず、何も言うことが出来ない俺は、
賢杜の手に自分の手を重ねるしか出来なくて。
あまりのぎこちなさに、心の中で自嘲した。