【BL】背徳の堕天使
俺も苦しい。
賢杜のそばは居心地が良かったから、離れるのも手放すのも辛い。
俺が残れば確かに一時だけは幸せかもしれない。
だけどその後に訪れるのは、更なる絶望。
賢杜の将来を滅茶苦茶に狂わせてしまう。
そう分かっていながら、そばに居ることなんて出来ない。
現実から、賢杜から、
逃げるんだ、俺は。
覚悟の決まった俺は、賢杜の言葉にゆっくりと頷いた。
「わかったよ、賢杜。
ここにいるから。
だから会社に行って。
俺、待ってるから」
「本当、か……?」
信じられない、という顔をした賢杜。
恐らくもっと俺が抵抗すると思ったんだろう。
あまりに呆気なく了承したため、半信半疑の様子で俺を見ていた。
俺は安心させるように頷き「本当だよ」とさらに嘘をかためる。
賢杜がここを出たあとに、出ていくつもりだった。