【BL】背徳の堕天使
2
「あ……」
ドアを開けた瞬間、抱き締められた。
「やっぱり。出て行く気だったんだろう」
「な、んで……」
会社に行ったんじゃなかったのか。
ああ、俺が出るのが早すぎたのか……
そんな俺の考えを、根底から覆すかのように賢杜は言った。
「なんで? そんなの、決まってる」
きつく抱き締めながら、賢杜は俺の呟きを拾い上げる。
「仕事より君をとったと言ったら、笑うか?」
「は……?」
思わず腕で賢杜を押し返し、驚愕に染まっているであろう瞳をぶつける。
「賢、杜……何言って……」
見返してくる瞳はどことなく笑みを含ませ、すっきり晴れ晴れとした表情を向けてくる。
「今、連絡した。
次回の査定に含めるとさ。それが終われば恐らく異動だ。
出世は見込めないが、首は繋がった」
「そんな……」
絶句した俺に、賢杜は優しく微笑む。
「出世を棒に振った責任、とってくれるだろう?」