【BL】背徳の堕天使



「あ……」


ドアを開けた瞬間、抱き締められた。


「やっぱり。出て行く気だったんだろう」


「な、んで……」


会社に行ったんじゃなかったのか。

ああ、俺が出るのが早すぎたのか……


そんな俺の考えを、根底から覆すかのように賢杜は言った。


「なんで? そんなの、決まってる」


きつく抱き締めながら、賢杜は俺の呟きを拾い上げる。


「仕事より君をとったと言ったら、笑うか?」


「は……?」


思わず腕で賢杜を押し返し、驚愕に染まっているであろう瞳をぶつける。


「賢、杜……何言って……」


見返してくる瞳はどことなく笑みを含ませ、すっきり晴れ晴れとした表情を向けてくる。


「今、連絡した。

次回の査定に含めるとさ。それが終われば恐らく異動だ。

出世は見込めないが、首は繋がった」


「そんな……」


絶句した俺に、賢杜は優しく微笑む。


「出世を棒に振った責任、とってくれるだろう?」


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