そらとくも〜2つの恋〜
「美沙(みさ)また別れたんやって?」
ピンクにリボンを貴重としたネイルをこちらに輝かせながら、咲穂(さきほ)が言う。
「私から別れたわけじゃないもん」
「じゃぁ何でそんなに落ち込んでないのかねー」
冗談めかしたため息をつきながら、咲穂は私の部屋のベッドに倒れこんだ。
幼い頃から私は咲穂を知っている。
いわゆる、幼馴染。
でも、なぜか咲穂には自分をさらけ出せなかった。
どこか、羞恥心が邪魔をする。
咲穂が抱えるクッションを取り上げて、私も顔をうずめてみる。
懐かしい匂いがして、落ち着いた。
「今回で男何人目だっけ?」
咲穂はそう私に聞きながら、手持ち無沙汰に今度はクマのぬいぐるみを手にとった。
抱えられているクマが息苦しそう。
クマは咲穂から小5の時にもらった誕生日プレゼント。
「何人だろ?7人目?」
もう数えたくもない。
男の数なんて。
私が振られた数なんて。
それでも咲穂は毎回聞く。
-今回で何人目?
数を口にすると一気に疲労感が舞い込んだ。
それでも
悲しくなんかない。
ただ虚しくて、寂しいだけ。