彼女はまるで風のようで

降りしきる雨の中

僕は着替えを済ませるとリビングへ向かった。





仕事で遅くなる母に代わり、父が夕食の支度をしていた。





「合格発表の前日、この辺りで事故はなかった？」





「なんだ突然？父さんが知るかぎり、そういったことはなかったぞ。それよりいいとこに来た。トマトの湯むきを手伝ってくれ。」





僕は了承し、作業に加わった。





弟の事故もあの涙も嘘だろう。





女は皆女優なのよという母の言葉を思い出した。





「女の涙って反則だよね。」





父は息子の意外な一言に笑いながらも、大きく頷いていた。