彼女はまるで風のようで
高校から家までは自転車で10分くらいの距離で、僕の家がある『あさがおニュータウン』からは近い。





もともとは母の要望で学校に近い所、つまりあさがおニュータウンに越したという話なのだが。





これから通うことになる高校は周りを住宅街に囲まれていて、殺風景といえばそうかもしれない。





ただ、高校の敷地内には緑があり、なんだか砂漠の中にポツンとオアシスがあるような感じだ。





僕が家に帰り着くと、母をはじめ、父や祖父祖母など大勢の人が迎えてくれた。




少しばかり大袈裟だと思うが、僕は一人っ子なので昔から何か祝い事があればこんな感じだった。





よくやったとか今日は焼肉だぞとか色々な激励を受け、母からは当然の結果でしょという母らしい辛口な褒め言葉を頂いた。





日が落ちるとお祝いモードも徐々に醒めてきて、親戚や祖父らも家路につきはじめた。





僕は部屋に戻り、あの子のことを考えていた。
< 9 / 50 >

この作品をシェア

pagetop