有給休暇(たったの12p)
 わいわい、がやがや。

『ここはお前らの溜り場か!』

 エコーが掛っている。自分と女子大生を除き、みな知り合いなのだ。

 ──勘弁して欲しい。この現象は、一体ナンなのだ。


 やれ「今日は清吉さんが、一番やったな」とバア様が言うと、やれ「悔しいわぁ」と別のバア様が答える。

 やれ「膝さえ悪うなければ……」とオバハンが言うと、やれ「今度は負けへん」と首筋のはっきりしたジイ様がリベンジを誓う。

『エロジジイは清吉というのか……。それから、オバハンは元気やろ』

 確実にオバハンは医者に掛らなくて良い。これには自信がある。

 その後、どこぞの犬がフンをしただの、子供を生んだの、……と話題が尽きない。

 美和は頭を抱える。静かにしているのは、本を読み出した隣の女子大生だけだ。


「あれぇ、トメさんの姿が見えへんけど……」

 突然、バア様の一人が言った。その言葉に、皆がトメさんを探す。

「ほんまや、おらへん」

 暫くして、オバハンが答える。

 美和には実にどうでもいい。居ようが居まいが、知ったことではない。ついでに言えば、トメさんが、バアさんかジイさんかも判らないが、全て丸くひっくるめて、非常にどうでもよろしいのだ。

 だが、そんな美和も、次の一言だけは、聞き捨てならなかった。
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