有給休暇(たったの12p)
「トメさん、どうしたんかな。具合いでも、悪いんかいなぁ」

 具合いでも悪いんかいなぁ。……かいなぁ。かいなぁ……。

 リフレインが叫んでいる。そうだ、そんな歌があったっけ。


『……』


「はあ?」


 思わず、声が出た。

 しかし、誰も気付かずに会話が進む。

「なんかあったんかな」

 待合室がザワめき、「僕、見てくるよ」と、悪びれずに携帯ゲーム機で遊んでいた百円ガキが立ち上がり、出ていく。

 その後、「トメさん、心配やなぁ……」、としみじみとジイ様が呟いた。

 そんな光景に、美和が呆気にとられていると、二番目の女性が呼ばれ、最初のエロジジイが戻ってくる。

 薬を貰い、そのまま帰るのかと思い気や、長椅子に腰掛け、溜り場に溶けこんでしまう。

『ジジイよ。用が済んだら早よ帰れ』

 もう、心の中でさえ余り言葉も出ない。体力を使い果たしそうなのだ。

『去れ。シッ、シッ』


 美和の叫びも虚しく、雑談が再び始まる。

「セツさんもお元気で……」

「いえいえ、ウメさんこそお元気じゃありませんか……」

 バア様同士の会話だ。

『だから、元気ならココに来んなよ』

 何度も思う。

 自分の感覚に自信が持てなくなってくる。この雰囲気に感化されそうだ。

 いや、負けてはいけない。そんなことで、負けてはいけないのだ。

 そんな時だった。例のガキが、戻ってきたのである。
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