0.39メートル
鞄から、クリアファイルを取り出して、それを彼女に渡した。
見る見るうちに表情が和らいでいく。
「こんなこともあろうかと、予備を貰ってきてます」
「さっすが。タツル君」
太陽みたいに笑って、空子さんはボールペンを握った。
予備は、二枚あった。
全部で三枚貰ってきた。
なのにこの女。
三枚とも無駄にしやがった。
一枚目は自分の名字を間違えた。
二枚目は、力が入り過ぎて破りやがった。
セロハンテープで貼ればいいだろう、と言ったら、頑として拒否した。
三枚目は、緊張をほぐすため、喉も渇いた、とか言って、書く前にオレンジジュースを一気飲みしだした。
最後の一枚の婚姻届の前で。
そして、思いっ切りむせて、用紙をオレンジ色に染めやがった。
あんまり太くない堪忍袋の緒が切れそうになっていると、空子さんはその場にへたり込んだ。
見る見るうちに表情が和らいでいく。
「こんなこともあろうかと、予備を貰ってきてます」
「さっすが。タツル君」
太陽みたいに笑って、空子さんはボールペンを握った。
予備は、二枚あった。
全部で三枚貰ってきた。
なのにこの女。
三枚とも無駄にしやがった。
一枚目は自分の名字を間違えた。
二枚目は、力が入り過ぎて破りやがった。
セロハンテープで貼ればいいだろう、と言ったら、頑として拒否した。
三枚目は、緊張をほぐすため、喉も渇いた、とか言って、書く前にオレンジジュースを一気飲みしだした。
最後の一枚の婚姻届の前で。
そして、思いっ切りむせて、用紙をオレンジ色に染めやがった。
あんまり太くない堪忍袋の緒が切れそうになっていると、空子さんはその場にへたり込んだ。