0.39メートル
くっきりと、はっきりと突き出ているのどぼとけ。
指先で、ちょい、とつついてみたい気分にさせられる。

わたしは彼の名前を小声で口にしてみた。
そっと名前を呼ぶと、何だか気恥ずかしくなってきて、この場から逃げ出したくなってきた。

寝起きでぼんやりとしていた思考回路が、だんだんはっきりとしてきて。
今のこの状況を理解して自覚すると、とたんに心臓が落ち着かなくなってきた。
胸の中にあるそれが早鐘を打ちはじめて、顔が、一気に熱くなる。

肩を抱き締めている指先から、密着しているからだから、伝わってしまう。
知られてしまう。

いまさら意識して緊張しているなんて知ったら、このひとはきっと、この男はきっと。

わたしは心の中でぶんぶんと首を振った。

絶対、知られてはいけない。絶対に、知られるのはいやだ。
知られる前に、逃げ出そう。

わたしは肩を抱いている手を、あくまでもそうっと、外そうとした。
< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop