夏海(15)~ポケットに入れてるだけの電話が勝手に電話することってあるよねー
私はソファから腰を上げ、ガラステーブルにタン! と、飛び乗った。

ふわりとめくれあがったスカートがゆっくりと元に戻る。

と、同時にテーブルの上を一気に駆け抜け前傾姿勢で熱唱する秋の背中に着地した瞬間に

腰の曲がった秋の背中を蹴り、秋「ぐへ!」


私は宙を舞う。


その宙を舞う私を360度ぐるりとまわりながら見られている気配がした。

マ、マトリクスですか? パンツみえちゃう☆

新日本プロレスのシャツを着た男の頭を両足で捕まえるように飛びついた。

カラオケルームの天井は低く、私の長い髪の毛が天井に当たる感触がした後に、髪の毛は頭を通り越して目の前にワサリと覆い被さってきた。

男は、一歩後ずさりしたあと、持ちこたえるように重心を前へと移動させる。

その一歩を頭の中、体中で感じる。

私は前にかかる髪を両手で払いのけるように、かき上げた手を

大きく振りなおして反動をつけ、私の全体重を地面へぶつけるようにして一気に上体を反らした。

天井、

逆さまに見える熱唱する秋、

逆さまモニター、逆に流れる歌詞


私のすべての体重を重力と融合させるように



真っ逆さまに――



墜ちてくデザイヤ――


腹筋にクッと、力を込め、


手が床に触れる瞬間に――


おもいっきり両足で捕まえた頭部を遠心力に乗せて弧を描くように地面へ――

空中でエビのような格好になる私。エビちゃん。なんっつて☆


グァシャン!!!!



しまった!

失敗かッ!

頭が床に当たるよりも早く

男の背中がガラステーブルに当たり、それがクッションになる形で加速しつづけていたスピードは殺されたが、

バランスを崩しながらも私は渾身の力を込めて、派手に舞うガラステーブルとともに、

足のチカラだけで強引に、男の頭を地面に叩きつけた。


ゴッ



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