夏海(15)~ポケットに入れてるだけの電話が勝手に電話することってあるよねー

和奏様のカメラ

くたびれたソファを蹴るようにしてあたしは体を浮かせた。

視界にふわりと影が舞うのに男が気付いて顔を上げた頃には、あたしのノーパソのヒミツの花園がぐっと迫っており、男は本能的な猛り声を上げた。

(いやんいやん)

あたしは男の頭を太ももで挟み、浮かせた体にかかる重力に任せてそれを抱えるように体を丸めた。

かかる重さに男の体がぐらっと後ろに傾いた、刹那。

「らめえええ…っ!」

ぐんっと上体を逸らしながら、渾身の力を込めて叫んだ。
重心が瞬間に移動、弓なりになりながら回転をかけるあたしの体に男が浮き、ただ声を荒げた。

その雄叫びと秋のシャウト、あたしのソプラノが奇妙にハモり、あ!これ前衛的!と変な陶酔感にくるまれた、その奇跡的なメロディーは男の頭がガラステーブルと奏でる崩壊音でクライマックス。

頭の刺さったテーブルの、細かく砕かれたガラスはライトを浴びながらキラキラと宙を舞い、それは音の美の終焉を彩り、かつあたしを祝福するようで、つかの間充実感に満たされた。


「やた!91点!」

「秋、すごいぉ!」

秋とあたしはチャンピオンを熱唱した。


堀内孝雄はマジで渋い。
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