フェアリーテイル~キミとオレとの約束~
「泣いてない。出てって狩野。」
目をこすりすぎちゃって、目のまわりがかなり痛い。
もう痛くて泣いているのか、哀しくて泣いているのかあたしにもわからない。
あたしが出てってと言っても、狩野は出ていこうとしなかった。
むしろもっと近付いてきて、まだ目をこすろうとするあたしの手を掴んだ。
「なにすっ…」
「るっせぇな、目が腫れてんだよ!無理しやがって、どんだけいきがったっててめぇは女子高校生なんだよっ!ほっせぇ腕して泣いている、15の女なんだよ!いい加減認識しろよそれを!」
うるさい。
知ってる。
そんなこと、とっくに認識してる。
フワッ…
狩野はへたりこんでいるあたしをそのまま抱き締めてきた。
女ウケのいい甘い香りに包まれる。
そういやこいつ、遊び人だった。
誰とでもこんな事をやる。
「あたしをそこらへんの女子と一緒にしないで。」
あたしは強く狩野の身体を押し返した。
ちょっと身体が離れる。
…よけいまずかったかも。
あたしの目の前には、海乃とは違う、切れ長の目をした狩野の顔があったから。
文字通り
吐息が、触れ合うほど近くに。