男前な彼女
「…兄さん、咲夜は襲われている訳じゃないんじゃない?」
「そんなわけあるか!!変な男に抱きつかれ、咲夜は泣いているじゃないか!!
あまり人に涙を見せない咲夜が泣いてるなんて、よっぽどのことだろう!」
しまった。
あたしは上牧に抱きつかれて泣いているわけではないのに…
さっきまでの涙があらぬ誤解をさらにややこしくしたようだ。
「大体、こんな状況になってるのに、なんでそいつはまだ咲夜にくっついてるんだ!!おかしいだろ!!」
「あ……」
この状況にさすがの上牧も焦っていたのか、今までフリーズしていた。
ようやく動き出した上牧は、あたしに背を向け、朝陽兄ちゃんの方を向いた。
「すみません。いろいろと誤解をさせてしまうようなことをしてしまったようで」
「誤解…?」
上牧の言葉に、朝陽兄ちゃんは眉をぴくりと動かした。
「何が誤解なんだ?君がしてることは明らかにおかしいだろう?」