男前な彼女
プリントを拾い終わり、それを渡すと「ありがとうございましたぁ!」と言って、そそくさと去っていった。
なんなの…あの人…
「浦河 千尋」【ウラカワ チヒロ】
南があたしの後ろに立って、男の子の走り去る後ろ姿を見ながら言う。
まるで、あたしの考えていたことが見えたかのようなタイミングだ。
「浦河 千尋?」
「そ。顔はかっこいいんだけど…性格が…まぁヘタレなのよね」
「…なんで、そんなこと知ってんの?」
「最近、噂になってるもん。それに、さっきの対応見ただけで分かるでしょ?」
確かに…
あの自信なさげな表情と、怯えた声は……
…にしてもヘタレって…
もっと他に言い方はなかったのか。
ふと、顔をあげると、
怯えた背中はいつのまにか、廊下の奥に消えていた。